パソコンやタブレット無しでは使えないデジタル教科書

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文部科学省の有識者会議は6月2日、次期学習指導要領がスタートする2020年度から全国の小中高校で導入するのが望ましいとする中間報告をまとめた。デジタル教科書とは紙の教科書をデジタル化したものであり、デジタル教科書を閲覧するための端末やビューアはデジタル教科書には含まない、としている。しかし、これは根本的に誤っている。何故ならば、デジタル教科書は閲覧するための端末やビューアが必須であり、それなくしては何の役にも立たないのである。にもかかわらず、デジタル教科書からハードを切り離すことにより、有識者会議は何を意図しているのであろうか。

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デジタル教科書の導入は文部科学省が決めたが、ハードの導入費用は総務省の専決事項

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Digital Textbook

無償である教科書からハードを切り離し

デジタル教科書とそれを閲覧するためのハードが一体であるにもかかわらず、それを分離させようとしていることになる。何故そうしようとしているかというと、義務教育である小中学校で使用する紙の教科書は無償とすることが法律で決まっているからである。分離することにより、ハードを無償論議から切り離したのである。但し、切り離したことでデジタル教科書は無償となるわけではなく、有識者会議は『紙の教科書とデジタル教科書の双方を義務教育へ無償給与することは困難』として『保護者の一部負担となる可能性』を示唆している。但し、既存の小中学校向け教科書のデジタル化はほぼ終了しており、2020年度版以降のデジタル化についても費用的には大きな問題は起こらないと予想される。問題は1台数万円はかかるであろうハードである。

教育ICTのスタートは2009年の原口ビジョン

分科会がデジタル教科書とハードを分離させたもう一つの理由は、ICTの利活用に関しての省庁の担当分野の違いがある。教育ICTにおいては、文部科学省はソフト面(デジタル教科書とそれを使ったソリューション)を担当し、ハードについては総務省が担当することになっている。そもそもデジタル教科書の配備を初めて公に打ち出したのは、民主党政権下の原口総務相が2009年12月に提起した『原口ビジョン』であった。それが2010年5月のIT戦略本部による『新たな情報技術戦略』に具体的方針としてまとめられ、現在の自民党政権にも受け継がれてきたのである。常に総務省が主導してきており、デジタル教科書問題は基本的には『ICT(=ハード)の利活用』が最大の目的である。

原口元総務相は佐賀出身、県知事、武雄市長は元総務官僚

ここで気が付いたのだが、原口元総務相は佐賀県出身である。佐賀県にある武雄市は全国に先駆けて2014年から小学校、2015年から中学校へのタブレット導入を行っているが、当時の樋渡市長は総務官僚出身である。また、同じく2014年から県立高等学校にタブレットの導入を行った古川佐賀県知事(当時)も、総務官僚出身であった。佐賀県でタブレット導入が進むのは、最初は佐賀県(鳥栖市)出身の孫正義が絡んでいると予想していた。しかし、武雄市が導入したのは格安Android端末であり、佐賀県立高校が導入したのはWindowsタブレットであった。武雄市の受託企業となったエデュアスはソフトバンクの子会社であり、当初は孫正義も積極的にかかわろうとしたのは間違いない。しかし、導入端末がiPadからAndroid端末に変更される過程で、教育ICTへの興味を失ったかのような姿勢をみせている。

ハードの問題は総務省で対応することに

文部科学省の有識者会議の中間報告によると、デジタル教科書の導入は各地の教育委員会に丸投げされている。これまでに述べてきたように、『デジタル教科書の導入=ハードの導入』である。その費用を自前で用意できる自治体は限られており、政府からの援助がなければ早期導入は困難と言わざるを得ない。政府からの援助を差配するのは総務省であり、総務省は教育の分野でも主導権を発揮できることになる。デジタル教科書とハードの切り離しは、実態としては総務省の権限強化につながっていく。但し、有識者会議はそこまで考えた訳ではなく、単純に『ハードの問題は総務省の管轄だからそちらでやってくれ』と放り投げただけなのだろう。

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