ティム・クックCEOの『MacはPCではない』発言の真意

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Appleのティム・クックCEOは、iPad Proの発売に際して『今更何故PCを買うのだろうか?』という発言を行った。この発言を受けてAppleはMicrosoft同様、MacとiPadを統合するのではないかという懸念が浮かび上がった。ティム・クックCEOは11月中旬に行われたIrish Independent紙のインタビューの席上、『MacとiPadの統合はない』とそれを明確に否定した。と同時に『我々はMacをPCと同じカテゴリーの製品とは考えていない』と答えており、これがご都合主義的な発言としてネット上で非難の対象となっている。

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ティム・クックのPCとはPC/AT互換機を指しており、Windows PCのことである

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会社で使っていたIBM PC

ティム・クックの『MacはPCではない』は正しい

『PC』を『パソコン』と捉えた場合、ティム・クックCEOの発言は確かに理解しがたいものになっている。しかし、彼の言う『PC』は『PC/AT互換機』のことであり、Macも含まれる『パソコン』のことではない。『PC/AT』とはかつてIBMが発売していたパソコンの製品名であり、それと互換性のある製品群を指しているのが『PC/AT互換機』である。IBM PC/ATが発売された1987年当時、パソコンはメーカーが各社が独自の仕様で発売していた。しかし、IBMはPC/ATの仕様をオープンにしたことから、Compaqなどの大手パソコンメーカーが順次『PC/AT互換機』に参入してきた。『PC/AT互換機』はCPUにIntel、OSにMicrosoftのWindowsを搭載しており、かつてはWindows PCの代名詞でもあった。現在は『PC/AT互換機』でないのはAppleのMacのみという状況であり、ティム・クックCEOが『MacはPCではない』というのはまったく間違っていない。尚、ティム・クックCEO発言の原文をみると何処にも『Personal Computer』という言葉は出てこない。また、海外では日本の『パソコン』にあたる言葉は『Conputer』であるが、ティム・クックは一貫して『PCs』を使用している。

日本語対応DOS/Vの登場と共に崩れたNECの牙城

米国では『PC』が『PC/AT互換機』を指しているのは日本より知られているようだが、日本では殆どの人が『PC=Personal Computer』として『パソコン』と理解している。また、日本では『PC/AT互換機』よりも『DOS/V機』と呼ばれることが多く、PCから『PC/AT互換機』を連想しにくくなっている。IBM PC/ATが発売されたのは1984年であり、『PC/AT互換機』の市場は急速に世界に拡大していった。しかし、日本ではNECのPC-98シリーズが一世を風靡しており、『PC/AT互換機』の市場が広がることはなかった。その原因は『PC/AT互換機』は日本語の使用ができなかったのに対し、国産のPC-98シリーズは最初から日本語に対応していたことにある。但し、1990年に日本IBMが『PC/AT互換機』で稼動する日本語対応OSであるDOS/Vを発売したことから、瞬く間にNECの牙城は崩れ去ることになった。NECのPC-98シリーズはDOS/V搭載で対抗を試みたが、Windows 95がリリースされた1995年には製造停止となり、新たなVALUSTERシリーズの登場で『PC/AT互換機』路線へ全面転換した。

PC/AT互換機は死語となってしまった

日本語OSであるDOS/Vが1990年に登場し、1991年のWindows 3.0と1993年のWindows 3.1、更に1995年のWindows 95は最初から日本語に対応していた。従って、ビジネスで本格的にパソコンが導入されたのは1990年代に入ってからであり、殆どの人は最初から『PC/AT互換機』を使用することとなった。また、パソコンメーカーも特に『PC/AT互換機』を前面に打ち出すことがなく、日本では『PC』が『PC/AT互換機』を指していることを理解している人は極めて少ないと言えるだろう。DOS/Vはドスパラ(DOS/Vパラダイス)というパソコン専門店の屋号として残っているが、『PC/AT互換機』は死語になったのは間違いない。ティム・クック氏をインタビューしたIrish Independent紙の記事の邦訳をTC(Techcruch)のサイトで読むことができるが、そこでもPCsをパソコンと訳している。

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