武雄市の反転授業の取組とiPad

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今日の朝日の朝刊に~「授業 まず家で」試行へ~と題する記事が掲載された。これまで学校で受けてきた授業を動画でまとめたものを家庭で受け、実際の授業では分からない部分を教え合うことや互いに話し合うことを行う。従来とは「反転した」授業方法をタブレット端末を導入して行うというものである。

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「1人1台のタブレット」と反転授業の関係

iPadを使った公開授業(武雄市立武内小学校:武雄市のHPより)

iPadを使った公開授業(武雄市立武内小学校:武雄市のHPより)

全校一斉に反転授業を実施

反転授業(Flipped Classroom)というのは2000年代初めから米国で試みられている授業形態である。朝日によると、当初はオンラインの無料講座を活用する形で小中高に広がり、現在は大学に拡大しているとのことである。児童生徒は自宅で保存された動画やインターネット上のサービスが受けられる環境が必要であり、武雄市は来年度に市内の全小学校の児童全員にタブレット端末を配布する。2015年度には中学校の生徒に広げ、合計で4,200台のタブレット端末を導入する。それにより、市内の小中学校全体に反転授業を実施することになる。

2010年から小学校にiPadを導入

武雄市は市内の2小学校に2010年からiPadを導入している。山内東小学校は2010年に40台を導入し、総務省の地域雇用創造ICT絆プロジェクトに応じて4年から6年の児童と教師用に146台を整備した。地域雇用創造ICT絆プロジェクトには武内小学校も対象校となっており、2校合計で約200台のiPadが配布された。その後、市が設けたICT教育推進協議会の諮問を受け、今年の5月に全小中学校へのタブレット端末導入を決定した。タブレット端末の機種については、現時点では決まっていない。

武雄市は図書館でも話題豊富

2011年4月、武雄市はiPadを利用して電子書籍が読める武雄市MY図書館の試みを始めた。「図書館に行かなくても自分のiPadで図書を借りることができる、日本初の取り組み」と銘打っていた。iPadを持っていない人にはiPadの貸し出しも行っている。また、Android用アプリも用意しており、当初の計画では数年のうちに蔵書を約10万冊とすることを公言していた。しかし、現実には権利者からの許諾が得られず、2012年2月末時点で借りられる電子書籍は150冊しかないことを朝日新聞が伝えている。

また、武雄市は図書館の運営をTSUTAYAを経営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)に委託するなど、何かと話題性に富んだ試みを行っている。今年4月にオープンした図書館は、年中無休で朝9時から夜9時までの12時間開館というだけでなく、館内には図書コーナーと併せてCD・DVDのレンタルや本の販売を行なうコーナーが設けられている。また、コーヒーチェーンのスターバックスも営業しており、そこで買った飲み物は館内のどの席にも持ちこみが許されている。

武雄図書館のバース図

武雄図書館のバース図

ワンマン市長の独走?

何かと話題の多い佐賀県武雄市だが、市長の樋渡啓祐(ひわたし けいすけ)という人が仕掛け人となっている。樋渡氏は1969年11月に武雄市で生まれた43才。東大を出て総務庁(現在は総務省)に入り、2006年に武雄市長に当選して現在2期目に入っている。上記のように市政に新しい感覚で臨んでいるが、問題発言の多さでも抜きん出ている。地方自治体の首長は首相よりも権限が強いと良く言われるが、それを地で行くようなワンマン市長であることは間違いない。

「1人1台のタブレット」を先行実現

iPadの発売は2010年だが、発売した年に小学校1校にiPadを導入したことになる。また、2014年度からは全小学校、翌年度は全中学校へのタブレット端末導入を既に決めている。小中学校へのタブレット端末導入は、政府が中心となって2020年度までに達成する計画で進んでいる。現在は全国20の小中学校で実証実験を行っており、タブレット端末導入の具体的な設計図はまだ完成していない。その中で武雄市は自力でタブレット端末導入を行おうとしている訳だが、それで何を具体化しようとしていたのかが今ひとつ不明であった。

「1人1台のタブレット」で利用するデジタル教科書

「1人1台のタブレット」は、この間の教育ICTを推進する人たちの合言葉であった。現在の紙の教科書をデジタル化し、それを閲覧するための電子書籍リーダーとしてタブレット端末を児童生徒全員に配布する、ということをこの1節の文章で表している。現在、小中学生数は約1,000万人おり、「1人1台のタブレット」が実現するときには1,000万台のタブレット端末が必要となる。1台5万円とすると、5千億円の売上高となる。一気にそれが実現するわけではないと思うが、タブレット端末メーカーとしては非常においしい市場となることは明らかである。しかし、現実には「1人1台のタブレット」で閲覧する教科書は、いまだ製品化されていない。現在あるデジタル教科書は、電子黒板に表示するために作られた教科書(これを指導者用デジタル教科書と呼んでいる)のみである。つまり、「1人1台のタブレット」を実現する環境が未だ整っていないのである。現在は「1人1台のタブレット」でも電子黒板用に作られたデジタル教科書を閲覧するしかないのである。

「1人1台のタブレット」で反転教育

「1人1台のタブレット」を実現するための環境が整っていない中、武雄市長とそのブレーンが見つけたのが反転授業である。反転授業を実施するためにタブレット端末を導入するという訳である。反転授業という試みは以前から国内でも行われていたようだが、武雄市が反転授業という用語を使用したのはつい最近になってからである。TBSが8月21日に放映したNews23で樋渡市長が「図書館が一段落したので 次 教育やります」という発言と同時に出たのが最初であり、今日の朝日が報じた「武雄市教育委員会が小中学生全員に1台ずつ配るタブレット端末で、「反転授業」に取り組む方針を決めた。」に繋がる。時系列的にみると、

  • 2013年5月・・・・・全小中学校へのタブレット端末導入を決定
  • 2013年8月・・・・・反転授業に取り組むという樋渡市長の発言
  • 2013年9月・・・・・武雄市教育委員会の方針発表

という流れとなる。タブレット端末導入が先に決まっており、そこで行う教育の内容が後から決められたのである。「1人1台のタブレット」をめぐる話題は、先に書いた「佐賀県でMicrosoftがAppleに逆転勝ち」同様、どこかきな臭いにおいがするものが多い。

佐賀県とiPadの関係

しかし、武雄市と負けないくらいに佐賀県もiPadやタブレット端末に関する話題が多い。佐賀県といえばソフトバンクの孫正義の出身は佐賀県鳥栖市、民主党で総務大臣だった原口一博は佐賀市出身・・・・・・・いずれもiPadや教育ICTに大きく関係している。偶然の一致ではないのだろう。 

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