今でこそ凋落が激しいカナダのBlackBerryだが、かつてはスマートフォンの世界で飛ぶ鳥を落とす勢いでシェアを伸ばしてきた企業であった。BlackBerryの飛躍を支えてきたのは、プッシュ型のeメールである。欧米では日本のiモードのようなメールサービスは提供されておらず、インターネットのeメールが利用できるスマートフォンが大きくシェアを伸ばしたのであった。
eメールがプッシュ型で利用できるスマートフォン
最初のスマートフォンはNokia製
世界で初めてのスマートフォンは、1996年にNokiaが発売したNokia 9000 Communicatorとされている。大型ディスプレイとQWERTYキーボードを搭載した携帯電話で、PDA機能を内蔵した携帯電話というべき端末であった。その後、2001年にはSymbian OSを搭載、MMS(Multimedia Messaging Service)対応、MicrosoftのOfficeと互換性のあるワープロや表計算などを搭載したNokia 9210 Communicatorがベストセラーとなった。しかし、その後のスマートフォンの市場を大きく切り開いたのは、カナダのRIM(Research In Motion:現在はBlackBerry)であった。
ポケベルのメッセージ送受信機能がRIMの出発点
RIMはカナダのベンチャー企業で、ポケベルにメッセージ送受信機能を持たせた端末Inter@ctiveで1996年に参入してきた。1999年には米国NASDAQに上場し、「BlackBerry Wireless Solution/Enterprise Server software for Microsoft Exchange」というサービスで初めてBlackBerryというブランドを使用した。また、それまではメール機能だけで音声通ははできなかったが、2002年にGSM/GPRS対応のデータ・音声対応端末BlackBerry 5810を発売することで本格的に携帯電話の市場に乗り出すこととなった。BlackBerryのメールサービスは、初期の製品であるInter@ctive以来、一貫してプッシュ型のサービスであった。
iPhne登場の2007年がRIMのピーク
RIMの企業向けサービスはBES(BlackBerry Enterprise Service)と呼ばれるもので、企業内に専用のサーバーを置くことでEメールのプッシュ配信に対応させたほか、社内のデータへのセキュアなアクセスを可能にした。従って、米国では政府機関や任官企業に幅広く受け入れられ、瞬く間にスマートフォンのトップメーカーの躍り出ることとなった。また、2003年には一般ユーザー向けにBIS(BlackBerry Internet Service)のサービスも始まり、スマートフォンの販路を広げていった。BlakBerryの日本進出は2006年、NTTドコモがBESの提供と端末BlackBerry 8707hの投入を行った。翌2007年には全世界のユーザーが1,200万人を超えており、RIMは名実共にスマートフォンの覇者となったのであった。
eメールのプッシュ型利用=スマートフォンの真髄
日本では携帯電話キャリアがメールサービスを提供しており、それは自動的に着信するプッシュ型のメールであった。しかし、キャリアが提供する所謂キャリアメールは、パソコンで利用するeメールとメールのやり取りは行えるが、キャリアメールをパソコンで送受信することはできない(注)。一方、スマートフォンで使用するのは、通常はパソコンで利用するeメールである。つまり、スマートフォンに事前に設定しておけば、パソコンのメルアド宛のeメールがスマートフォンで見ることができるのである。更に、スマートフォンの場合はプッシュ型で送受信されることから、日本のキャリアメールと同じ使い方が可能となる。スマートフォンは、「eメールがプッシュ型で利用できる」ところにスマートフォンとしての真髄がある。
注:ドコモメールは、Webメールとすることでキャリアメールのアドレスをパソコンから利用できるようにしたもの