Retina DisplayのRetinaは、Appleのマーケティング用語である。液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのようなディスプレイの製品名ではなく、また仕様上の明確な規定もない。
Retinaとは人間の目の網膜
Retinaが最初に使われた2010年6月のiPhone 4発表時は、1インチ当たりのピクセル数が300ppi(pixel per inch)以上のものという説明がされた。人間の目の網膜(Retina)が個々のピクセルを認識できる限界点がほぼ300ppiであり、それを超えると極限までの美しい映像表現ができるところからRetina Displayと名づけられたものである。
Retina Displayは2012年にiPadとMac Book Proに搭載
Retina Displayは2010年6月に発売されたiPhone 4に初めて搭載されたが、10月にはiPod touchにも採用された。iPod touchはiPhoneと同じ3.5型のディスプレイであり、iPod touchにもRetinaが搭載されるのは時間の問題であった。しかし、ディスプレイが9.7型となるiPadへの搭載は2012年3月と大きくずれ込んだ。また、Retinaを搭載した15型のMacBook Proは、iPad発売の3カ月後の2012年6月であった。液晶ディスプレイの高細密化が急速に進んでいることを示している。
ディスプレイの大型化に伴ってRetinaの臨界点も変化
Retina Displayの一つの基準としてAppleは300ppiという数字を取り上げた。しかし、ディスプレイが大型化するに伴ってその数字は変化してきた。3.5型のiPhoneやiPod Touchでは300ppi以上を確保できていたが、iPadやMacBook Proでは300ppiをかなり下回っている。
■iOS製品のppi
製品名 | ディスプレイサイズ | 解像度 | ppi |
iPhone 4 | 3.5型 | 960×640 | 326 |
iPod touch(4G) | 3.5型 | 960×640 | 326 |
新しいiPad | 9.7型 | 2048×1536 | 264 |
MacBook Pro Retina | 15型 | 2880×1800 | 220 |
iPhone 4発表時のRetina Displayの説明と矛盾が発生することから、Appleは新しいiPadを発表する際に「離れてみることになるから、iPadとiPhoneの臨界点は実質的には変わらない」との説明を付け加えた。
シャープのIGZO採用で真のRetina実現か?
シャープは2012年4月、亀山工場でIGZOパネルの本格生産開始の発表と10型のサンプルを公開した。また、2カ月後の6月にはIGZOの新技術を発表、同時に13.5型のパネルの参考展示を行なった。
■IGZOのppi
参考展示 | ディスプレイサイズ | 解像度 | ppi |
1012年4月 | 10型 | 2560×1600 | 300 |
2012年6月 | 13.5型 | 3840×2160 | 326 |
上の数値を見る限り、シャープは300ppiを超える品質のディスプレイの製造を実現しており、技術的には500ppi以上が可能とされている。インチ当たりのピクセル数(ppi)はディスプレイサイズが変わっても変化しないことから、iPadやMacBook Proでは真のRetina DisplayがシャープのIGZOパネルで実現することになる。