5大メジャーで米国の市場の75%を占める
2000年当時、米国のレコード会社は5大メジャーとインディーズからなっていた。メジャーとは自前で配送部門と販売部門を所有、多数のレーベルを傘下に持つレコード会社をさしている。それに対し、インディーズとは自前の配送部門を持たず、メジャーから独立(インディペンデンス)したレーベルを指している。
■5大メジャーとインディーズレーベル
レコード部門 |
親会社 |
主要メディア |
シェア |
BMG Entertainment(BMG) | 独Bertelsmann | Random House |
11% |
EMI Recorded Music(EMI) | 英EMI Group |
- |
12% |
Sony Music Entertainment(SME) | 米Sony(ソニーの米子会社) | Sony Pictures |
14% |
Universal Music Group(UMG) | 仏Vivendi Universal | Universal Pictures |
26% |
Warner Music Group(WMG) | 米AOL Time Warner | Wanner Bros. |
12% |
インディーズレーベル |
- |
- |
25% |
合計 |
100% |
(アルファベット順 シェアは2000年当時の音楽CD)
親会社は巨大メディア企業
この当時、米国の企業を親会社とするメジャーはWarner Music Groupだけであった。Bertelsmannはドイツ、EMI Groupは英国、Vivendi Universalはフランスの企業であり、米Sonyは日本のソニーを親会社としている。5大メジャーすべてが主要先進国5カ国の企業の傘下であった。
EMIを除く他の4大メジャーの親会社は音楽以外のメディアを所有しており、BMG以外はすべてがメジャーの映画会社であった。BMGの親会社であるBertelsmannもParamount Picturesの獲得に動いたこともあり、EMIを除く4大メジャーの親会社は映画と音楽という2大エンタテインメント産業を傘下に置いてインターネット時代の覇者になることを目指していた。
Napsterに対抗して自社配信を立ち上げ
5大メジャーは、2000年に相次いで音楽配信を開始した。その背景にあったのはファイル交換サイトNapster(ナップスター)の猛威であった。Napsterは1999年に登場、サービス開始1年で登録ユーザーは1,000万人を超し、5大メジャーの許諾を得ていない違法な音楽ファイルがインターネット上で大量にやり取りされることになった。この状況を脱するために、5大メジャーはNapsterを提訴する一方で合法的な音楽配信を自ら立ち上げることを急いだ。
■5大メジャーの音楽配信参入状況
社名 |
販売サイト |
配信/圧縮方式 |
開始時期 |
SME | HastingEntertainment/TowerrRcords.com /AllianceEntertainmentなど |
WMT/ATRAC3 |
2000年4月 |
EMI | オンライン小売店 | WMT/WMA |
2000年7月 |
UMG | LAUNCH.com/LycosMusic/RollingStone.com /BestBuy.com/GetMusic /Excite@Home |
InterTrust/AAC (Bluematter) |
2000年8月 |
WMG | CDNOW/CDplus.com/mediaplay.com /TowerrRcords.com |
WMT/WMA (Liquid Audio) |
2000年11月 |
BMG | LycosMusic | WMT/WMA |
2000年11月 |
(開設の早いもの順)
既存のレコード店に遠慮
5大メジャーが米国で開始した音楽配信は、自らが音楽配信のサイトを構築するのではなく、音楽専門サイトなどと提携してそのサイトのサービスであるかのようにして提供されたものである。配信プラットフォームは、5大メジャーが配信技術を有する企業と提携して自ら構築したものであり、実質的には5大メジャー自身による自社音楽配信であった。5大メジャーが自社の配信サイトを構築せずに既存のポータルサイトや音楽専門サイト上でのサービスとしたのは、既存のレコード店の強い要請があったことによる。
DRMのベンチャー企業
また、採用した配信/圧縮方式はMicrosoftの技術を採用するところが多かったが、音楽配信の黎明期であったことから、様々なベンチャー企業が顔を出している。InterTrustは2002年に米SonyとオランダのRoyal Philipsの子会社に買収されたが、MicrosoftのWM DRM 10はInterTrustのライセンスを受けている。また、Liquid Audioの特許権は2002年9月にMicrosoftに売却した。