日本でAppleのiTunes Radioが開始されない理由

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iTunes Radioは、Appleが2013年9月に米国で開始した音楽ストリーミングサービス。AppleのiPhoneやiPadなどのiOS搭載機器で利用でき、ユーザーの好みに合った音楽をレコメンドしてくれるパーソナライズド・ネットラジオと呼ばれるサービスである。iTunes RadioはユーザーをiTunes Storeに呼び込む役割を果たすことから、Appleとしては100カ国を超えるiTunes Store提供国へiTunes Radioを広げたいと思っているのは間違いない。しかし、日本でのサービス開始は、あと2~3年待たなければならないだろう。

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日本ではネットラジオも許諾権の対象となっている

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iTunes Radio

米国の放送局はCDの収録楽曲を自由に放送可能

iTunes Radioの世界展開は、Appleの希望に反して遅々として進んでいない。2014年中に英国、カナダ、オーストラリアとニュージーランドで開始されるとの情報が流れたが、現時点ではオーストラリアのみが米国に続いているだけである。この問題は、放送に関する米国の特殊な権利関係が大きく影響している。米国ではCD音源の放送局での使用には何の制限も無く、レコード会社に使用料を払う必要もない。その法的な根拠としては、米国は1961年に制定されたローマ条約を批准していないところにある。ローマ条約批准国においては、レコード会社は放送局にCD音源の使用料を請求する権利を有している。何故米国が批准しなかったというと、当時の米国の大手レコード会社の親会社が放送局だったのである。使用料を払いたくない親会社の圧力で批准しなかったことは明らかである。

ロイヤリティを徴収するために設立したSoundexchange

音楽のデジタル化により違法音楽配信が広がる中、米国でもデジタル音楽の権利を守る動きが出てきた。その第1歩が1996年に成立したWIPO実演レコード条約の批准であり、それを具体化したのが1998年のデジタルミレニアム著作権法の成立である。この中には従来の放送局以外のメディアに対する2次使用料の請求権が認められており、それらのメディアからロイヤリティを徴収するためのSoundexchageという団体が設立された。ここで確認しておかねばならないことは、Soundexchageは楽曲使用の許諾を行う団体ではなく、あくまでも2次使用された楽曲の使用料を徴収する団体ということである。言い方を替えると、Soundexchageに使用料を払えばメディアは自由に楽曲を使用できるのである。

日本はレコード製作者にも送信可能化権

日本の場合、著作権法でレコード製作者の権利として放送局への2次使用料請求権が認められている。上記と同様、日本の場合も放送局への使用料の請求権であって許諾権ではない。従って、日本においても放送局は、レコード会社に使用料を払うことでCD音源を自由に利用することができる。しかし、作詞作曲家(著作権者)には公衆請求権が認められており、著作物を放送、有線放送、インターネット送信、又はインターネットにアップロードする(送信可能化権)ことなどを止めることができる。ここで特筆されっるのは、日本ではレコード製作者にも送信可能化権が認められていることである。つまり、日本のレコード製作者には放送や有線放送でのCD音源使用に関しては許諾権はないが、インターネット(配信、放送)に関しては許諾権を有していることになる。

CD音源の放送使用に関する日米比較

米国においてもインターネットにおける配信と放送に違いはあるようだが、その辺のことについてはよく調べていない。従って、ここでは放送についてだけ述べることにするが、日米の放送とネットラジオに関するレコード製作者の権利の違いは以下のように分けることができる。

CD音源使用に関する日米比較
レコード製作者 放送 ネットラジオ
米国 放送局の自由使用 2次使用料請求権
日本 2次使用料請求権 許諾権

CD音源をネットラジオで使用する場合、米国では使用料さえ払えば自由に使用できるが、日本の場合は事前にレコード製作者の許諾が必要となる。つまり、Appleが日本でiTunes Radioを開始するためには、レコード会社の許諾が必要なのである。ネットラジオは音楽をストリーミング配信することであり、日本の一部のレコード会社ストリーミング配信を拒否している。そのことから、Appleが日本でiTunes Radioをスタートさせる場合は、拒否しているレコード会社の楽曲を除くしかない。拒否しているレコード会社の代表はAvexだと思うが、Spotifyの場合は日本でのサービス開始を延期している。iTunes RadioもAvex抜きでのサービス開始は、どうしても避けたいと思っているのは間違いない。

無料のiTunes Radioは難しい?

米国とオーストラリアのiTune Radioは無料で提供されているが、使用料がかなり安いから可能だと思われる。日本のレコード会社がネットラジオへの楽曲提供の許諾権を持っていることは、日本では米国やオーストラリアを大きく上回る楽曲使用料が必要なことは間違いない。Avexなどから楽曲が提供されたとしても、iTunes Radioの無料提供は難しいと思われる。以上、あれこれ見てきたことから結論を出すとすると、日本でのiTunes Radioのサービス開始は2~3年待たなければならないと思われる。そして恐らく、iTunes RadioとSpotifyは、ほぼ同時に日本でのサービスを開始することになるだろう。

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