Spotifyは日本の音楽業界の黒船になり得るのか?

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今朝の朝日新聞に、『音楽業界、「黒船」を警戒 世界最大手、日本参入足踏み』という記事が出ていた。ストリーミング音楽配信のSpotifyが7月にサービス開始する予定だったが、一部のレコード会社が楽曲提供に応じなかったことから延期を余儀なくされたとのこと。Spotifyは2年ほど前に日本法人を設けており、水面下でレコード会社と交渉してきたらしい。昨年の12月にはCEOのDaniel Ek氏が「日本参入は時間の問題」と述べていたことから、ほぼ各社の許諾が得られるところまで来ていたようだ。

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日本の音楽業界もガラパゴス化している?

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iTunes Music StoreとiTunes Matchも再交渉

日本のレコード会社と交渉したが交渉が難航して一旦は引き上げ、数年後になんとか交渉がまとまってサービスに漕ぎ着けた・・・・というパターンは、実は今回のSpotifyで3度目となる。Spotifyは交渉を中断という段階で今後何時まとまるのか、またはまとまらないのか不明だが、恐らく1~2年後にはサービス開始することになるだろう。レコード会社の主張が通るのかSpotify側の意図通りになるのかは分からないが、前2者の場合はサービス事業者側が折れることによってサービスを開始することができた。前2者の1者はAppleであり、2003年に米国でiTunes Music Storeを成功させた直後から日本のレコード会社への働きかかけを行っていた。しかし、実際にスタートできたのは2005年の8月であった。また、もう1者もAppleであり、問題となったサービスはiTunes Matchであった。iTunes Matchは米国では2011年11月にスタートしたサービスだが、日本で開始されたのは今年の5月であった。こちらも2012年末には間違いなくスタートすると見られていたが、結局それから1年半が経過していた。

一律価格で譲歩して配信ルールで貫徹

iTunes Music Storeの日本開始時、レコード会社との争点になったのはAppleの主張する「1曲●●●円の一律価格」と「配信ルール」であった。最終的にはAppleが「1曲●●●円の一律価格」を引っ込めて「新譜200円 旧譜150円」を受け入れることになった。一方、「配信ルール」についてはAppleの主張が通り、欧米同様のものが日本でも適用されることになった。但し、それを不満とするSMEはiTunes Music Storeへの楽曲提供を見送り、提供に応じたのは7年後の2012年11月であった。

米国の1.5倍の使用料で決着した日本

iTunes Matchは、ユーザーの持つ楽曲がiTunes Store(2006年9月にサービス名変更:iTS)の曲とMatchした場合はユーザーの楽曲とiTSの楽曲が置き換わる。Matchしなかった場合、ユーザーの楽曲がAppleのサーバーに自動的にアップロードされる。これはレコード会社の権利を侵害する行為であることから、レコード会社の許諾が必要となる。要はレコード会社に使用料を払うことになるのだが、その金額が最初は折り合わなかったことになる。米国ではユーザーがAppleに年額24.99ドル払っているのだが、今年5月にスタートした日本版iTunes Matchでは年額3,980円となっている。このことは、米国の1.5倍の使用料で決着したことを示している。

一度身を引いて1~2年後に再交渉

楽曲提供に応じなかったレコード会社を朝日は明らかにしていないが、恐らくAvexで間違いないだろう。Avexは以前からストリーミング配信には否定的であり、確かレコチョクの「レコチョクBest」やSonyの「Music Unlimited」にも楽曲提供に応じていなかったハズである。iTunes Music Storeの日本開始時にはいの一番に楽曲提供に応じており、ダウンロードサービスには積極的である。ダウンロードサービスでは価格の75%程度がレコード会社の収入となるが、ストリーミングの場合はそれと比べるとすずめの涙にもならない金額になるようだ。それが楽曲提供に応じていない最大の理由と思われるが、問題はSpotifyがAvex抜きでサービス開始しなかったことにある。Avex抜きで見切り発車した場合、Avexを取り込むタイミングは非常に難しいものがある。SME抜きでスタートしたiTSにSMEが楽曲提供したのは7年後のことであり、Spotifyはその轍を踏みたくはなかったのであろう。ここは一度引いておき、1~2年後のスタートを目指して再交渉するのであろう。

日本の音楽業界の黒船とはならない?

朝日の記事によると、日本の音楽の売上高に占める音楽ソフトパッケージの割合は80%であり、米国の30%と比べると格段に大きい。恐らく日本の音楽ユーザーは「音楽を所有する」ことを重視しているようだ。ストリーミング配信は「音楽を聴く権利」を得ることであり、音楽データを所有することにはならない。「レコチョクBest」や「Music Unlimited」も好調だという話はあまり聞こえておらず、恐らくビジネスとしては苦労しているものと思われる。世界的には好調が伝えられるストリーミング配信だが、Spotifyはこの日本の特異性に気付いてサービス開始を遅らせたのかもしれない。iTunes Matchでは使用料を高くすることでサービス開始にこぎつけたが、ストリーミング配信はスタートできても日本では根付かせるのに一苦労するのではなかろうか。つまり、Spotifyは日本の音楽業界の黒船になるどころか、日本の特異性の中に埋もれてしまうのではなかろうか。

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