乃木坂にあるSony Music Studioが、アナログレコードのカッティングマシンを導入したとのこと。しかし、Sony MusicはCDを普及させたことでアナログレコードをこの世から放逐した犯人の一人であり、カッティングマシンの導入を声高に喧伝する資格は無いはずだ。昨今はアナログレコードの音のよさが見直されており、それを否定したSony Musicも認めざるを得なくなったということだろう。
CDで音楽のデジタル化に成功したが、それが逆に現在のSonyの足を引っ張るという皮肉!?
音楽のデジタル化で音質は向上したのか否か!?
SonyはPhilipsと共にCompact Disc(CD)を開発した。アナログレコードのLPが12インチ(約30cm)であるのに対し、CDは5インチ(約12cm)しかない。サイズは半分以下になったにもかかわらず、収録時間はLPが片面約45分程度に対してCDは約74分と50%以上長くなった。音質については当時から賛否両論あったが、SonyはCDはデジタルだからアナログよりも音が格段に良いと主張していた。しかし、CDは2.2万Hz以上の高音部分は強制的にカットされているのに対し、アナログレコードはそのような制限は無い。実際、アナログレコードは4~5万Hzまで収録されているとされており、物理的にはアナログレコードの方が高音質ということになる。しかし、人間の耳の可聴範囲は20Hz~2万Hzであることから、SonyはCDの方が音が良いと主張していた。
残っているのはCD音質のマスターのみ!?
レコード会社は、メディアとして発売したものの音源をマスターとして保存している。アナログレコード時代はアナログレコードをプレスする大本となるメタルマスター、CDの場合はCD規格に落とし込んだCDマスターがそれにあたる。しかし、1990年代に殆どのアナログレコードはCD化されたことから、公式に残っているのはCDマスターのみというのが実情である。つまり、CD規格に落とし込む前段階のマスターテープが残っていない限り、レコーディング時の音質には戻せないということになる。そうせざるを得ない状況に追い込んだのは、他ならぬCDを開発したSonyに他ならない。そのSonyがアナログレコードのカッティングマシンをスタジオに導入した訳だから、掲題に『あのSony Musicが・・・』とした次第である。
音楽のCD化がSonyの足を引っ張っている!?
2013年以降、Sonyはハイレゾ音源を全面に打ち出している。ハイレゾ音源はメディアに載せて発売しているのではなく、音楽配信でダウンロードする方法を採用している。しかし、その市場は伸び悩んでいるのが実態であり、Sonyの思い通りには進んでいない。
その最大の原因は・・・・ハイレゾ音源の不足に尽きるだろう。ハイレゾ音源はデジタル音源であり、通常96kHz/24bitや192kHz/24bitと表記される。CDもデジタル音源であり、その表記は44.1kHz/16bitである。つまり、CDの音質はハイレゾ音源の3分の1から6分の1の音質でしかなく、殆どの楽曲がCD音質しか公式には残っていないのである。SonyはCDで音楽のデジタル化に成功したが、音楽のCD化でハイレゾ化の足を引っ張るという皮肉な結果を迎えようとしている。